2005年05月24日
2005.5.24
都会の森に降る雨は何だか静かに美しい。
それは夕暮れにやってきた。
私は赤い自転車でクッキーと散歩。
アキニレの木々を抜けて、ブランコの横を走り過ぎ、
時計台も通りこして、いつものグラウンドに行ってみた。
クッキーの友達はみんな後ろ姿で帰り始めている。
私も、クッキーもその姿を追わなかった。
私達は雨が気持ちいいと感じたから。
クローバーも白つめ草もしっとり伸びやかに横たわって、クッキーはその表面を飛ぶようにかけた。
雨足が強くなる。
私達は大きな楠の木の群れに雨やどりした。
大木の下の大地はまだ顔を見せる様子もなく、ベンチの下にも楠の落ち葉が悠然としている。
雨に濡れてなおサクサクと歯切れのいい音がソーカイなのは、大木が雨粒をもっと欲しているからだ。
葉に当たる雨粒の音はかすかな光のようにちょっとずつ違ってチラチラ心地よい。
小鳥達も今は鳴かない。
ただ雨の音とクッキーが落ち葉の上をかける音だけが、この森を支配していた。
不図通りかかった老人に、
「傘がないのかね」と問われた。
「はい、だけど、いいんです」
「傘がないのかね」
「はい」
老人は私に自分の傘を差し出した。
「家はすぐそこだから使いなさい」
私は傘をさして森を出た。
- Permalink
- by
- at 16:43
- in カヲルニッキ
- Comments (0)
- Trackbacks (0)