2005年04月16日

七色ドロップスweb ver.5

私は音速の彼方で虹のカケラを拾いました。

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せかせか林道を登ったら、虫捕り網を持った老人に出会いました。
老人は遠眼鏡をかけて、ふもとの高原を眺めていました。
私はもっと登っていきました。
黄色の中でも一番とびきりの菜の花畑が広がっていました。

私はもっと登っていきました。
するとくりの木とかきの木が仲良く話し込んでいました。
その笑い声は木立に響いていました。

そばを通るときにくりの木に
「君、ノンポリもポリシーだと思わないかね」
と質問されました。

何も答えないで立っていると、
「おや、もうこんな時間じゃないか」
と笑って、林道をくだっていきました。

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私はもっと登っていきました。
日傘をくるくるまわして笑いながら登っていきました。
するとそこは海でした。海はカモメの歌をきいていました。
海も歌っていました。それはつぶやきでした。
はかなげで力強い一拍子でした。

ナ、ニヌ ナニ、ヌ

また或る日、それは夏でした。夕暮れでした。
「こんなに暗いからあかりをつけましょうか」
というと
「いいえ、あかりをつけると何も見えなくなるんです」
と答えました。

私の周りでは、くたびれたようにやっと息をしていた酸素達が、
せわしなく、もう分かったから旅につれていってくれとねだりました。
なので、私は彼らをカバンにつめました。

そのカバンには昨年の冬から編んでいた蝶がたくさん入っていました。
私はそれを春まで届けにいく途中だったのです!

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日はそのように過ぎていきました。
それは明るい緑色でした。
飛び立った蝶はまだ透明で欠伸をしながら四方へ舞っていきました。
私は蝶の出発を、いつまでも、いつまでも見送っていました。

ああ、
白い雲の、せめてあのあたりに青い空をもってきたいと考えていたけれど、
どうせなら海ごとこぼしてしまえと思いつきました。

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そしてこの窓から白いヨットにのって旅に出るのです。
クラッカーを持って。

イスラエルの海はあまりにエメラルド。
潮風に濡れた髪に太陽の花をさす。

2005年03月17日

七色ドロップスweb ver.4

キラ星は青いマスカラをつけて、オールナイトのライブに出かけたそうです。

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一人はあかりを灯けることが出来ました。
そのそばで本を読むのはまた別の人でした。
マルセル・プルーストは花について描くことがとても好きだったそうです。

一人はあかりを消すことが出来ました。
そのそばで眠るのはまた別の人でした。
草も木も動物も星達も静かな眠りにつきました。
あるいは、眠りながらアステロイド群に導かれて
流星祭りに行く日もあったそうです。

それから朝が来ました。ほんとうの(いくつもの)朝が来ました。
それから夜が来ました。また、あたらしい夜が来ました。

2005年03月10日

七色ドロップスweb ver.3

私は今日、明るい春の花の歌声を聴きました。

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風の神ゼフェロスが妖精のクロリスに春風を吹きこむと、
クロリスの口もとから春の花がつぎつぎとあふれだす。
それは例えばパンジーの花。
私はそれを身につけて誰にも秘密の春のお守り。
近頃私は胸に小鳥を飼っている。
チチチチチチとさえずると、とたんに私の胸は高鳴る。
それは例えば
ほうせんかの種のはじける音。
キンポウゲの花の由来。
雪の上の足跡。
悲しくない落ち葉。
いろんな海の波の色。
ここは空想美術館!
  芸術的な猫の眠り
  ききたいのはヒバリの唄声
  時間どろぼうとじゃれてる子犬
  カリブ海あたりの海賊とパール
  虹の粒子 不可視光線

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小鳥はたまにくちばしでついばむ。
私は胸にヒリヒリしみる。
眠れなかった夜明けのまぶしさ。
落ちてしまったさくらんぼの実。
雨の降らない日のアジサイ。
ひそひそという水音に貝がらの耳をあてようね。
悲しみでないあの日に貝がらのかたわれを探そうね。

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私の小鳥にパンのくずを投げて下さい。

2005年02月27日

七色ドロップスweb ver.2

私は昨夜、まんまるのお月さまを見た

郵便配達のバイクの音が遠くの方から聞こえる。
私はしーんと耳を澄ます。
カーテン越しに夏の風がささやく。
「お前宛の手紙があるか知りたいかい?」
夏の風はいじわるだ。また風が吹いた。
窓辺においている、美しいビードロでできた金魚鉢の世界から
ほおづき色した金魚がじーっと外を見ている。
好奇心?憧れ?退屈してる?
あなたが飽かずにずーっと見つめている先は私と同じ
世界が見えているかもしれないね。
私はいつかあなたをそこから外に出してあげたいと、
ほんとうにそう思うのだけれど、そうしたら、あなたが
あんまりに広くてどっち方へ進んだらいいのか、
わからなくなってしまって、よりいっそう、狭い空間から
動けなくなるんじゃないかしらって心配なんです。
あなたはあまりに赤くて小さいから。
私もいつか知らない光と色と匂いの世界へ行ってみたい。
また吹いた。
お昼寝の時、あなたがきかせてくれたあのメロディーが
夢の中まで追いかけてきて
レースのようなたそがれ。
目覚めて
チョコレートひとつぶ食べました。

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2005年02月23日

七色ドロップスweb ver.1

私は今日、虹色の雲を見ました。

ヒメリンゴの実がたわわに実る頃、
甘くて酸っぱいイチゴジャム、キャンドルの明かり、
けしの花の咲き乱れる丘、港の夕映え、てんとう虫

あなたと会って、私はたくさんの花の名前を覚えた
桜の花が咲いたら、最後の花びらが散ったら!
私はもっとたくさんの花の名前が知りたくなった
「心」常にみたされぬ神秘なもの
ブランコのように私の心は風にゆれ、波にゆれ
「こういう日」

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私はまたひとつ花の名前を覚えた。
そうやって
ひとつずつ花の名前を教えてください。
ひとつずつひとの気持ちを教えて下さい