2005年03月25日

2005.3.25

私の住む家の曲がり角の坂下に高層ビルの一群れが見える。
今日は、その丁度真上に、それは大きな満月がポッカリ口をあけていた。
まだ色付かないその満月は本当に大きくて、私は七福神を思い出した。
それに何やらホッホッホッと笑っているのだ。

何かが起こりそうな気がする。

遠くの家の庭に咲いているコブシの花が白い流星群のようにまたたいて、
小さく風が咲く度にそのいくつかが消えていった。
時空を超えた不思議の旅が始まる。

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こういう日は夜行列車に乗ってどこまでもずっと出かけていたい。
そういえば、こっちにきて、ちっとも菜の花、菜種花を見ない。

地元では汽車の沿線、この季節になると、みんな一盛に背をぐーんと伸ばしてた。
ヒマワリじゃない、チューリップでもないあの漂うような黄色が私の中の一番の黄色だ。
汽車が通るたびにみんな手をつないで、同じ方法で揺れて交わる。
川べり、畦道、どこにでもいたのに。

ここでは、どこに行けば逢えるのだろう。みなさんの黄色はどんな色ですか。
ああ、今夜のお月の黄色もいいかもしれない。
きっとちょっぴり輝いて、笑いながら、春の宴のために餅つき。
つきたての餅をお空から方々にばらまいて、木々の大地の目覚めを促すんだ。

夜行列車はお月に向かって走っていて、子供の頃、
「ねえ、母さん、いつまでもお月がついてくるのよ」
と車の中で言っていた私も乗車している。
今宵は春の宴。

都会の街猫 Part.4

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都会の街猫の見る夢は
たとえばそれは
迷子にならない道標
なわばりあらそいで遠くに遠くに追いやられたって
この迷子にならない道標があれば平気
夜空を走る電線みたいにひっそりと
歩いて戻って帰れる

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2005年03月20日

2005.3.20

午前4時。大地がなにやら蠢いている。
ラッパスイセンのファンファーレ。

それは金色に輝いて今朝の太陽を空に導く、土を踏みしめるのは何とも云えない。
たまにパキンと幹を踏む。その音色の新鮮さに不図、大地に目をやると、
ヒメオドリコ草がかわいらしくみんなで輪になってクルクルクルクル回っている。
オオイヌフグリは今日の空をちぎって大地にばらまいたんだ。

枯葉のにおいも香んばしく、やわらかくなったそれらの下には
萌色の若葉が純粋なる春の準備をやっていた。

今日はお彼岸。
祖母の好きだったスイセンとスイトピーとバラを飾った。
道ゆく人々もいつもより花束を手にした人が多い。
そういう街の景色は悪くない。
もっともっとみんなが花を手にする機会がふえるといいのに。

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花はセンチメンタルで手にする人々をよりいっそう素敵に見せる。
大地の花は雄大にキラメき、人々の花はやさしい笑顔を運んでくれる。

私は花々を体いっぱいに抱きしめる。

2005年03月19日

2005.3.19

ヒマラヤスギのコウモリ傘に春風とおぼしき生暖かいのがビュービューと吹いた。
公園の木々にも静かに夜が降りてきている。

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木々がゆっくり目を覚まし始める。私はこっそりスベリ台の下にかくれて見ていた。
まだ芽を見せない木々達を見わけるのは難しい。
けれど、永年、それはおそらく公園の出来る前からそこに住んでた木々達は
「誰」など関係がないようだ。そこのすべてが「自分」なのだ。

一等高いヒマラヤスギが今夜の公園の木々を見回す。
紅桜、白梅、サザンカ、わびすけ、少し遠くの方にミモザの木。
これらが近頃の公園を色どって、今夜、公園の空はピンク色。
コブシが無骨に指をならして弱冠春をいそがせている。

天中にくもの巣のようにはりめぐらしたあの木の名前は何だろう。
そういえば、それも、やっぱり公園で、
大木が秋風に身をまかせるがままに金黄色の黄葉を散らしていて、
「ああ、木は我が木だと知らないから美しいんだ」って思った。

自らを意識しない強さ、私は夜の木々に抱かれる。
自らを認識し、努力する美しさ、人はその道を選んだんだ。
感じて、考えて、深呼吸して、模索する。

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公園にはいつの間にか猫の集会。
夜に目覚める木々達はきっと何でもお見通し。
スベリ台にかくれて、木々の会話を待っていたけど、私がいるのもお見通し。
聞いてはいけないんだ。木々の声は神の歌。
まだ私は聞いてはいけないんだ。
でもね、私、満天星の小さな欠伸、きこえたよ。

2005年03月17日

七色ドロップスweb ver.4

キラ星は青いマスカラをつけて、オールナイトのライブに出かけたそうです。

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一人はあかりを灯けることが出来ました。
そのそばで本を読むのはまた別の人でした。
マルセル・プルーストは花について描くことがとても好きだったそうです。

一人はあかりを消すことが出来ました。
そのそばで眠るのはまた別の人でした。
草も木も動物も星達も静かな眠りにつきました。
あるいは、眠りながらアステロイド群に導かれて
流星祭りに行く日もあったそうです。

それから朝が来ました。ほんとうの(いくつもの)朝が来ました。
それから夜が来ました。また、あたらしい夜が来ました。

2005年03月12日

都会の街猫 Part.3

都会の街猫の見る夢は
たとえばそれは
ロシアの猫サーカス団。

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そこは本当夢みたいなとこなんだって。
サーカスの芸は僕たちのいつものおにごっこ。
木に登ったり、トンネルをくぐり抜けたり、慎重に細い塀を歩いたり、
それでおやつまでもらえるんだって。
きっとそのサーカス団の次の駅が
天国っていうところなんだよ。

2005年03月10日

七色ドロップスweb ver.3

私は今日、明るい春の花の歌声を聴きました。

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風の神ゼフェロスが妖精のクロリスに春風を吹きこむと、
クロリスの口もとから春の花がつぎつぎとあふれだす。
それは例えばパンジーの花。
私はそれを身につけて誰にも秘密の春のお守り。
近頃私は胸に小鳥を飼っている。
チチチチチチとさえずると、とたんに私の胸は高鳴る。
それは例えば
ほうせんかの種のはじける音。
キンポウゲの花の由来。
雪の上の足跡。
悲しくない落ち葉。
いろんな海の波の色。
ここは空想美術館!
  芸術的な猫の眠り
  ききたいのはヒバリの唄声
  時間どろぼうとじゃれてる子犬
  カリブ海あたりの海賊とパール
  虹の粒子 不可視光線

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小鳥はたまにくちばしでついばむ。
私は胸にヒリヒリしみる。
眠れなかった夜明けのまぶしさ。
落ちてしまったさくらんぼの実。
雨の降らない日のアジサイ。
ひそひそという水音に貝がらの耳をあてようね。
悲しみでないあの日に貝がらのかたわれを探そうね。

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私の小鳥にパンのくずを投げて下さい。

2005年03月06日

都会の街猫 Part.2

都会の街猫の見る夢は
たとえばそれは
暖炉のある家の窓辺
凍える夜 パチパチゆらゆら
オレンジの明かりに目を閉じる
そこには約束された静かな時の流れ
ただ目を閉じてさえいればいいんだ

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都会の街猫の見る夢は
たとえばそれは
長崎の坂の上に住んでいる猫族
ニャーンといえばニョーン
四方から仲間たちの合図
あの日秘めた悲しみなんて次の集会に出て
座ってるだけで吹き飛んでしまう
金、銀、ブルー、チャコールグレー、オーシャングリーン
満月にウィンク
ニャーンといえばニョーン

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2005年03月05日

2005.3.5

今日の朝は光。
眠れなかった夜の余韻を一人かすかに眩しいなと感じながら快くかみしめる。
こういう朝は寝床に未練はない。道はまだ濡れている。
明るくてサラッとした帽子をそろそろかぶりたい。
午前10時20分、クッキーと外に出た。
クッキーはまったなしに走り出す。その様子は森をかけ抜ける
うさぎのような足運びで、私はそれがわりと気に入っている。
また、用事のない長い散歩に出た。
ハナミズキの枝が少しふくらんできている。
思いがけない昨日の天気で梅のつぼみは花を前に落下してコロンと転がっている。
その姿は切なくもあり、凛ともしている。
落ちてなお美しい。私は拾わずにそのままにした。
そっちの方が似合っていると直感したからだ。
梅のつぼみ達はひなあられのような華やかさを魅めて転がっていた。
ある程度、ある時間、初めて行く道、知っている道歩いて回った。
赤信号。

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横断歩道の後ろでゆっくり止まった。
背後に不図、視線を感じた。
振り返ってみると、真っ白な猫が渦くまってこっちを見ている。
・・・と思ったら昨日のなごり雪の固まりだった。

2005年03月01日

2005.3.1

日差しが暖かいと感じたら春が来ている証拠だ。
風はビュービューと冷たかったけど、今日は何だか希望が芽生えた午後だった。
ヒメスミレとの出会い。
そのつぶらにして健全な意志を匂わせる紫は、私の好みの小ささでかたまり。
フェアリーの笛を花びらの奥にかくしている。
春の息吹はそういう野路に不図訪れる。
ああ、この空のあっちの方から春が来ている。
春はたまにビューと吹く風にあおられながら、だけど間違いなく近づいてきている。
私は春の種をまこう。そして背伸びを思いきりしよう。
クッキーと一緒に春探ししよう。

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だから今日は、もうゆっくりおやすみね、クッキー。