2008年02月08日
2008.2.6
ああ、フリージア!
すれちがった自転車の後ろのカゴに、
ヤマブキ色のフリージアと白いデルフィニウムの花束。
川原のガタゴト道に、花束は軽やかに弾んで、
そのやわらかな風景は、
いかにも間近の春を誇張した。
郷愁が、
世界にはじけて、
自転車と共に行き過ぎる…
あのフリージアには見覚えがある。
小学校に入学して間もない頃、
教室の窓辺のロッカーの棚に、
あのヤマブキ色のフリージアがガラスの花瓶に入っていた。
入学したことに興奮して、
多分、誰も、その花を気にしていなかった。
私がその花に気付いたのは、
中庭の池の淵に、同じ花が咲いていたからだ。
中庭には、その他に、
グラジオラス、チューリップ、クロッカスに、桜草…と色とりどりに咲いていた。
そのなかにあってフリージアは、どちらかというと、脇役だった。
先生はなぜフリージアを選んだのだろう。
それは、今となっては、もう、永遠の秘密だ。
わたしが当時の先生に会うことは二度とないだろうし、
もし、そういう機会に恵まれても、
わたしはその事について尋ねないだろう。
ただ、時折、春が来る頃、
窓辺のフリージアを思い出して、
その他愛もない、秘密の謎解きを一人で楽しむのだ。
いつも変わらないのは、
フリージアは、
ポケットに隠したキャラメルと
新しい教科書の匂いがする。
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- at 01:28
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