2005年10月12日

2005.10.12

水辺の闇に光るカラスウリ。

夏、花弁の先が網状に細く裂けた白い花が咲き、その花には幾種もの蛾が群がった。
花は、花火の美しい時間帯に鮮やかにきれいに開くから、夜道にあの花はとても印象的だった。
その花とカラスウリの実が私の中で繋がったのは、いつかのお月見の夜である。

…朱色に怪しく光っていた。光沢のあるつるんとした皮膚。

それらの多くはさり気なく太陽を避けた、藪や林の中を好んだ。
その朱色にはお線香の炎が潜んでいた。あまり自分からは語らない、ひっそり静かな植物である。

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小学生だったろうか、国語の授業中、カラスウリという単語が教科書に出てきた。
宮沢賢治だったかもしれない… 先生はカラスウリを知ってるかどうか挙手を求めた。
手を挙げたのは、クラスで私と、もう一人男の子だけだった。

私はその子と話をしたことはなかった。だけど、カラスウリの授業以来、
その子とはある秘密を共有しているような、ちょっと特別な、親密な感情が芽生えた。

かといって、それから仲良くなるわけでもなく、言葉を交わすこともなかった。
それどころか、男の子が、その出来事をどのように感じているかさえ定かではなかった。

けれどそれで良かった。私は一人でその出来事を楽しんだ。
カラスウリを知っているということ…それは何かの合図だった。何か…、わからないから高揚した。

秋が終わる頃、カラスウリはようように色付く。形も大きさも一定ではない。そ
の不格好は、今でも、私を特別な感情にいざなう。

今宵、月は半月

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